コラム

2020年6月3日
クラウド化と在宅勤務化で、
コールセンターのBCPを実現!
導入と成功の秘訣を実例に学ぶ
  • クラウド連携
  • テレワーク

新型コロナウイルス対策として在宅勤務が進んでいますが、なかには対応が難しい業種・職種もあります。そのうちの1つがコールセンターです。専用のシステムや環境が必要で在宅勤務移行はかなりハードルが高いと言わざるを得ません。

オペレーターの健康を守るためコールセンターを一時閉鎖せざるを得なくなった企業もあり、BCP対策として在宅勤務を検討する企業が増えています。長期的な観点からも、オペレーターの採用難・人材不足の深刻化への対策として、多様な働き方が可能な体制が求められており、これを機に在宅勤務が可能な体制を整える価値は大きいのではないでしょうか。

その鍵を握るのが「クラウド型コールシステム」であり、実現における課題となるのが「どうやって社内の顧客システムなどと連携させるか」です。今回は、自社コールセンターにおいて、オペレーター全員の在宅勤務を実現したセゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)の事例をもとに、短期間でコストを抑えて自社システムとのデータ連携やカスタマイズまで実現させる方法をご紹介します。


コールシステムのリプレイスで
外せなかった3つの条件

セゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)では、自社が提供する「HULFT」や「DataSpider」などソフトウェアパッケージ製品のテクニカルサポートセンターを運営しています。以前は、オンプレミス型のコールシステムを利用していましたが、2020年にEOSL(サポート終了)を迎えること、また在宅勤務などより柔軟な働き方に対応するために、2019年からリプレイスの検討をスタートしました。

そのなかで挙がった条件は下記の3つです。

  1. 初期コストの抑制
    拠点開設時に、極力コストを抑えられるよう、クラウドサービスを利用する。
  2. 運用保守の統一
    オペレーターのフレキシブルな運用(在宅勤務など)や、業務・技術支援が可能になるよう、全拠点で同じシステムを利用する。
  3. 高い拡張性
    録音した通話内容の分析、他サービスの連携など先端のIT技術を取り入れ、サービス向上につなげられるシステム基盤を構築する。

これらの条件をクリアしたのが「Amazon Connect」でした。Amazon Connectは完全なクラウドシステムであるため、ハードウェア調達が不要であり、初期コストを抑えられます。また、利用量に応じた従量課金であるため、新規拠点でも必要な分だけ利用可能です。オンプレミスの場合は、ある程度の規模の拠点でなければシステムを構築できない……といったケースもありますが、これならば拠点規模にかかわらず同じシステムで統一できます。
そして、AWSが展開する機械学習や音声認識をはじめとする豊富なサービスと容易に連携できることは、ほかにはない魅力です。もちろんSalesforceなどの外部サービスとも連携可能であり、自社のビジネス要件にあわせた拡張性が見込めることが決め手となりました。


HULFT/DataSpiderにより、
カスタマイズ工数を80%以上削減

コールシステム構築にあたって社内の顧客情報システムと連携が必要な点は、当然ですがAmazon Connectであっても変わりません。そこで活用したのがHULFT・DataSpiderです。DataSpiderはデータ連携プラットフォームであり、ノンプログラミングで社内システムがもつデータを、Amazon Connect側のフォーマットにあわせて加工、転送することが可能です。データ連携をイチから開発するとなるとかなりの期間・コストがかかりますが、DataSpiderにより短期間・低コストでの実装を実現しました。
さらにもうひとつ課題となったのがカスタマイズです。Amazon Connectでは、コアとなるコールセンター機能はひと通り提供されているものの、現行業務で利用するとなると不足があり、カスタマイズが必要でした。
たとえば、Amazon Connectではコンソール画面で曜日ごとのオペレーション時間を設定できますが、テクニカルサポートセンターでは曜日ごとではなく日付単位で設定していました。また、管理者がコンソール画面で設定するのではなく、ユーザ自身で手軽に業務カレンダーを更新・参照できるようにしたいという要望も挙がっていたのです。これを実現するには開発が必要ですが、この機能は毎日利用するようなものではなく、そのためだけにWebサーバを立ち上げ、画面を開発するのでは費用対効果が見合いません。
この課題を解決したのも、HULFTおよびDataSpiderでした。Amazon Connectの業務カレンダー情報をDataSpiderでExcelに出力、ユーザはExcelでカレンダー情報を参照・更新できるように。逆に、ユーザがExcelを更新したら自動でAmazon Connect側に反映する仕組みを実現しました。このような機能も複雑なコードを書く必要がなく、どのデータを、Excelのどの列に出力するのかを設定するだけで簡単に実装できるため、スクラッチ開発した場合と比較して80%以上の開発工数削減に成功しました。


コールセンターだけじゃない!
Amazon Connectを様々な用途に

場所を問わずどこからでも利用できるAmazon Connectはコールセンターの在宅勤務を大きく進める存在と言えるでしょう。さらに、データ連携にHULFT・DataSpiderを活用することで、スピーディに自社にあったシステムを実現することが可能です。
Amazon Connectの用途はコールセンターに限りません。今回のパンデミックのように突発的な事態が発生した場合にもAmazon Connectを活用すれば、社員が自宅にいながら会社の電話を受け取り、社内のほかのメンバーに転送する、といった仕組みをすぐに実装できます。さらにはIVR(自動音声応答)のような機能もあるため、「音声ガイダンスを流して、要件ごとにメニュー番号を選んでもらう」といったことも可能です。
弊社が提供する「リンケージサービス※」では、Amazon ConnectとHULFT/DataSpiderをはじめとする当社の製品を組み合わせたご提案をおこなっています。今回ご紹介したような機能カスタマイズのほか、社内システムやほかのSaaSとの連携なども柔軟に対応可能です。自社事例はもちろん、様々なお客様への導入実績をベースにご提案いたしますので、興味をお持ちいただけましたら、ぜひお問い合わせください。
※データ連携ソフトウェア(HULFT/DataSpider)を中核に、企業内に分散したシステム/データ、さらには他社のシステム/データやSaaSなどをつなぐサービス。

著者:
株式会社セゾン情報システムズ(現セゾンテクノロジー)
リンケージビジネスユニット ビジネス開発部
データエンジニアリングコンサルタントチーム

土田 昌輝