コラム

2020年10月19日
ペーパーレス&
デジタル化で実現する
“経理・財務のテレワーク”
3つのシナリオ
  • AI-OCR
  • テレワーク
  • ペーパーレス

新型コロナウイルス対策として、多くの企業が在宅テレワークを全社導入しましたが、そうした企業でも、一部例外的にオフィスワークを続けざるをえない部門や部署がありました。その代表と言えるのが経理・財務部門です。一方、これらの部門において交代制で出社人数を制限するなどの対策をとった結果、決算や監査など日常業務の遅れが深刻化する企業も増加。実際に2020年4月30日時点にて、上場企業の約17%にあたる392社が3月期決算発表を延期しています。※1

経理・財務の在宅テレワーク移行には、ペーパーレス化が必須です。セキュリティ上紙の資料類をオフィス外へ持ち出すことはできず、どうしても出社しての業務が前提となってしまうためです。今回は、弊社における取り組みをもとに、ペーパーレス化の3つのシナリオをご紹介します。


デジタル化の遅れが
決算・監査業務の遅延をもたらす結果に

コロナ禍の影響により全社テレワーク移行に踏み切った企業内部に目を向けると、特に総務や経理など非生産部門における業務遅延が深刻化しています。

新型コロナウイルス対策としてテレワーク導入を進めようとすると、業務の遅延が避けられない。そんなジレンマを物語っているようですが、なぜそうなってしまうのでしょうか。

多くの会社で在宅テレワークの阻害要因として挙げられるのが、「紙請求書」「押印作業」「紙納付書受領」などで、いずれも書類関連の業務とされます。こうした紙ベースの作業が在宅テレワークの前提となる業務のデジタル化を阻んでおり、逆に、経理・財務の在宅テレワークを進めるにはペーパーレス化が欠かせないと言えます。

しかしながら、ペーパーレス化の対象領域(業務)は広範に及び、どこから手を付けたらよいか分からない…という方も多いのではないでしょうか。そこで以下では弊社の取り組みをもとに、ペーパーレス化の3つのシナリオをご紹介します。


シナリオ1.
経費精算の申請から承認までを
システム化

ひとつ目は、“経費精算システムのペーパーレス化&システム化”です。経理・財務部門の社員のみならず経費を申請する一般社員全体にまでメリットが及び、全社での在宅テレワーク移行を進めるうえで効果的です。

たとえば社内経費精算の場合、領収書を所定の申請書に添付して経理に提出、それに経理担当が承認印を捺印して支払い手続きへ、という流れで進みますが、紙ベースの経費精算では基本的に精算に関わる社員のオフィスへの出勤が前提となります。申請者も経理担当もテレワークでできるようにするには、紙の申請書や領収書をなくす”ペーパーレス化”と、データで申請から承認までできるシステムを導入する“システム化”が必要になります。

弊社では、2014年に経費精算システム”SAP Concur Expense”を導入し、経費精算処理のデジタル化に踏み切りました。
これにより、社員がシステムに必要なデータを登録して申請することで、自動的に承認ワークフローが回り、会計システムを介して支払手続きに進む流れを実現。経理担当や部門長などがオフィス外にいても、システム上で申請を承認することができるようになりました。またデジタル化により申請から承認までの証跡が残るため、監査対応の工数削減にもつながっています。


シナリオ2.
AI-OCR+請求書管理システムで
ペーパーレス化

二つ目は、取引先などから届く”紙の請求書のペーパーレス化”です。紙の請求書を手入力で会計システムに登録し、ファイリングして保管するといった業務は、入力ミスのリスクや保管スペースの増大といった課題を抱えています。最近では請求書の郵送を廃してPDFをメール添付などで受領するケースも増えていますが、結局プリントアウトして同じ作業を行っている企業が少なくないようです。

すべての請求書を紙ではなくPDFなどデータで受領し、その情報を会計システムなどに自動で取り込むことができれば、完全にペーパーレスで、格段に効率的な請求書管理を実現できます。また請求書の明細を関係組織ごとに配賦する作業なども、システムにログインさえできれば場所を問わず行えるようになります。

問題はPDFの請求書の情報をどうやってシステムに取り込むかですが、近年ますます高精度になってきたAI-OCRのサービス活用がおすすめです。AI-OCRとは人工知能の技術を用いて自動的に文字を読み取り、データ化する技術のことです。こうしたサービスを利用すれば、手入力なしで紙の請求書をデータ化でき、経理担当の負担を大幅に軽減できます。

弊社の場合は、受領したPDFの情報をAI-OCRで読み取り、請求書管理システムSAP Concur Invoiceと自動連携する仕組みを構築することで、ペーパーレス化と請求書受領後の処理の自動化を実現しています。


シナリオ3.
決算業務のシステム化で
在宅決算が現実に

三つ目は、経理・財務のハイライトともいうべき”決算業務のペーパーレス化&システム化”です。決算業務においては、いまだにExcelを多用した手作業中心で、数字の突合は紙ベースというアナログ決算の企業も多いでしょう。しかしこれでは、監査のための証跡を残すために大量の紙(会計伝票や決算の確認資料など)を出力して管理することになります。チームで決算業務を進める際のコミュニケーションも「ちょっとココの数字どうなっている?」と膝詰めで紙の資料を見ながらであったり、膨大なタスク管理をホワイトボード上で管理していたりするというケースも多く、いずれもオフィスに集まらないとできないことばかりです。

こうした状態から脱却し、経理・財務の在宅決算を実現するには、経費精算や請求書処理と同じように、アナログの業務をすべてデジタル化しシステムで処理する必要があります。

このようなニーズに対応するのが2019年に日本での提供がスタートした決算専用システム”BlackLine”です。
BlackLineは、経理・財務業務において経理担当者の時間を奪う反復的な定型業務(突合や照合作業)を自動化し、差異分析やフォーキャスト作成など生産性の高い業務に時間を割けるようにするためのSaaSです。
また業務プロセスの管理、ワークフロー機能のほか、自社メンバー間はもちろん監査会社も含めたグループコミュニケーション機能も搭載されています。これによりチーム全員がダッシュボード上でタスク全体の進捗を確認できるため、適切な進捗管理が容易になります。

弊社では2019年12月にBlackLineを導入した結果、年が明けて以降、新型コロナ対策として急遽在宅テレワークに移行しながらも、遅延することなく期末決算を完了することができました。


自社の成功体験をもとに
「モダンファイナンスサービス」を提供

各シナリオで登場する「SAP Concur Expense / Invoice」「BlackLine」といったソリューションや、請求書AI-OCRは、いずれもクラウドサービス(SaaS)です。弊社では、専用システムを作りこむのではなく、これらその時々のベストなツールを柔軟に組み合わせることで変化に対応しやすい環境を目指しています。

その際に各システム間でデータをつなぐ重要な役割を果たしているのが、データ連携ソフトウェア「DataSpider」です。
弊社は自社での成功体験をもとに、DataSpiderを中心にさまざまなクラウドサービスを連携させ、経理・財務のDXで桁違いの効率化を実現する「モダンファイナンスサービス」を提供しています。

自社の経理・財務業務のデジタル化にご興味のある方や、経理・財務業務の効率化にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

セゾン情報システムズにおける
「モダンファイナンス」取り組みの成果

  • ペーパーレス化を推進し、
    決算業務も
    テレワークで
    対応可能
  • 複数の
    クラウドサービスをつなぎ、
    変化に柔軟に対応できる
    データ基盤を
    実現
  • 業務標準化・
    効率化により、
    業務量を30%
    削減

※1 東京証券取引所まとめ

著者:
株式会社セゾン情報システムズ
リンケージビジネスユニット ビジネス開発部
モダンファイナンスコンサルタントチーム

チーム長 内山 智之