コラム

2021年5月28日
“SAP 2027年問題”を
DX推進に向けた基盤構築の
チャンスと捉える
  • データ連携基盤
  • クラウド連携

現在SAP社は、IT技術の進化やビジネス環境の変化に対応するため、次世代ERP製品「SAP S/4HANA(以下S/4HANA)」を新たに投入し移行を推奨しています。これにともない、2027年をもって「SAP ERP」のサポートを終了することも発表されました一連の背景には、加速度的に膨張するデータ量やビジネスのスピードアップへの対応、業務にあわせた複雑なカスタマイズで肥大化したシステムの負担といった課題があり、これらを解決するためには、「SAP ERP」の既存ユーザーがS/4HANA移行とあわせてBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が欠かせません。今こそ、ERPをDXで新たな可能性を切り拓いていくための基盤(要)と位置づけ、S/4HANAの最新機能・サービスを意識しつつBPRに取り組むべき時です。


課題:SAP S/4HANA移行だけでは解決しない!DX推進を阻む3つの要因

2018年に発表され“2025年の崖”で話題を呼んだ経済産業省の「DXレポート」では、DXを阻害する要因として「システムが部門ごとに構築され、全社横断でデータ活用できない」「業務の見直しに現場サイドが抵抗」「システムが複雑化・ブラックボックス化」の3つを挙げています。弊社がデータ連携の立場で携わってきた数々のSAP移行プロジェクトでも、実際に以下のような事象が発生しています。

阻害要因1:
全社横断でデータ活用ができない

こうした状況は、大きく分けて2つのパターンで発生します。ひとつは、複雑な業務プロセスをすべてERPに集約してしまっているパターンです。これはERP本来のコンセプトではありますが、ビジネスが変化するたびに、業務側がやりたい事を実現するための改修が必要になります。特に近年は変化のスピードが速く、ERPの改修スピードとコストが見合わなくなりつつあります。もうひとつは、すべてをERPに集約するのではなく、業務に適したクラウドを部分導入し併用するパターンです。この場合、各クラウドに分散するマスタのメンテナンスが煩雑になります。いずれのバターンも、工数やコストの問題で改修・メンテナンスが追いつかず、結果的に横断的なデータの利活用ができなくなります。

データ連携をEAIなどで実現しているケースが多いと思いますが、従来のEAIは安定重視したSoRの仕組みであり、スピーディーな改修には限界があります。実際、項目をひとつだけ追加するのに、周辺システムとの調整など必要な開発プロセスを回しリリースまでに半月以上を要したケースもあり、DXを効率良く進めるには、この連携部分をSoEに対応させる必要があります。

阻害要因2:
業務の見直しに現場サイドが抵抗

SAP移行プロジェクトの初期段階では、ERPを中心に既存システムへの影響や改修をどうするかの調整が必ず発生します。ところが、業務の見直しを嫌う現場サイドの反対によって既存システムの問題解決が頓挫。既にERPの要件が固まっているため、「データ連携でなんとかこのギャップを吸収して解決できないか」相談されるケースがあります。ですが、弊社は既存システムについて充分な情報・知識を持っていないため、各システムとの個別調整は工数と時間がかかるうえに、全体最適が難しく本来のBPRとかけ離れてしまう可能性もあります。最悪の場合、全体での十分なテスト期間を確保できず品質担保が難しくなったり、性能問題などのトラブルがプロジェクト後半で露呈しリリーススケジュールに遅延を来したりといったリスクもあります。

阻害要因3:
システムが複雑化・ブラックボックス化

様々な人物が個々にシステムをカスタマイズする状態は最終的にブラックボックス化を招き、その後の開発や運用で様々な問題を抱える事になります。直感的で分かりやすいGUIベースのEAIツールは、システムに関する理解を助けてくれますが、ブラックボックスの解消には不十分です。例えば、2つのI/Fを実現するプログラムのフローをGUIツールで見比べた時に、一方では縦に、他方では横に並んでいるとしたら…。また、同じアイコンに付与された情報が、ある作成者は英語で、別の作成者は日本語だったら…。GUIの“見え方”で本質的には同じものが別のものに見えてしまう可能性があり、正しく理解できないという意味でブラックボックスは解消されていないと言えます。

上記3つの阻害要因は、SAP移行に限らずDX推進においても共通する課題です。そしてこれらを解決するうえでは、何を、いつ、どのように進めるのかがポイントとなります。


提案:SAP S/4HANA移行とDX化を同時に実現するアプローチ

以下では、弊社がお客様のS/4HANA移行支援の経験から導き出した、S/4HANA移行とDX化を同時に実現するための、具体的方策(アプローチ)について説明します。

提案1:
ERPにない機能をクラウドサービスで補完し、
SoE指向の柔軟な基盤を構築する

全社横断でのデータ活用を実現するには、従来のEAIのような堅牢な基盤とは異なる、スモールスタートして柔軟に変更対応できるDX推進用の基盤を用意するのが効果的です。そのうえで、既存のEAIはSoRに特化した連携基盤として、DX基盤はSoEに特化した連携基盤として使い分けます。これにより、ERPを含む基幹システムなどのミッションクリティカルな連携はEAIによる安定重視での運用を継続したまま、DX基盤では、業務に合わせた様々なクラウドとの接続・連携が可能になります。EAIとDX基盤の併用による統合管理基盤で、SoRとSoEの“いいとこどり”を実現するアプローチです。

ビジネスの変化に柔軟に対応するDX基盤を
クラウド併用で実現

ビジネスの変化に柔軟に対応するDX基盤をクラウド併用で実現

提案2:
要件定義の前にデータ連携の
コンセプトを固める

既存システムの問題解決については、できるだけ早い段階で基盤のコンセプトを固める事に尽きます。下図は実際のSAP移行プロジェクトでの進め方をイメージしたものです。経営とITの全体戦略を元に考える構想フェーズ、構想したグランドデザインを元に具体的に計画や要件を可視化していく企画フェーズを経て、実装フェーズ(=システム開発)に辿り着きます。ここで重要なのは、要件を定義する前に、システム間を調整する役割の基盤(EAIおよびDX基盤)について、しっかりコンセプトを固めることです。それにより、その後の実装フェーズがスムーズに進み、プロジェクトの長期化を回避できます。

コンセプト重視でプロジェクトの長期化を防ぐ

コンセプト重視でプロジェクトの長期化を防ぐ

提案3:
IT部門による集中管理から
LOBとの共同推進へシフト

EAIなどSoRを主に管理する従来のIT部門は、LOBからの依頼を受け、改修権限を持つIT部門が都度開発する中央集権的な仕組みで安全安心な運用を実現してきました。これに対し、業務に最適なクラウドサービスを積極的に導入するDX基盤では、クラウドとの連携開発やビジネスロジックなどをLOB側に移管することができ、IT部門の役割は、DX基盤の環境準備や管理がメインになります。このほか両者が併存する統合管理基盤では、LOBからの要求・要望に対し、EAI側とDX基盤のどちらで実現するかにっいて判断する必要もあります。このためIT部門には、常にLOBとコミュニケーションをとりながら統合管理基盤を共同で運用していく姿勢が求められます。

LOBの要望をクラウド連携で迅速に実現

LOBの要望をクラウド連携で迅速に実現

提案4:
運用・開発ガイドラインにより
データ連携を標準化する

複雑化・ブラックボックス化の解消に効果を発揮するのが、基盤を運用・開発するためのルールをまとめたガイドラインです。これを運用担当やLOBが参照することで、データ連携の手法やプロトコルについての適切な判断、迅速な拡張、コスト最適化、属人化の回避、再利用促進などの効果が期待できます。 弊社では、多数のS/4HANA移行支援の経験に基づく標準的なガイドラインをご用意。コンサルテーションサービスを含め、お客様ニーズに最適な提案をおこないます。